幸い降る夜...




「あ・・・」

窓の外にふと目を遣ったノリコは声を上げた。

「雪・・・イザーク、雪っ、ね、雪だよっ」

空から降りてくるそれを確かめるように呟き、瞳を輝かせ、振り返り様に言葉を捲し立てる。
その存在に眩しげに目を細め、イザークは近付いた。

「そんなに珍しいのか」

包むように肩に手を遣り、共に窓の外の白きそれを眺めた。

「うん、・・・だって、あたしの住んでいた所では冬でも滅多に降らなかったから」
「・・・そうした場所を訪ねる事もなかったのか?」
「うーん、そうね、修学旅行でも北には行かなかったし、・・・あ、高校の時のそれは行きそびれたんだわ、確か」
「シュ、ガ‥リョコ?」

耳に馴染みのない言葉だった。問うようにノリコの顔を覗くイザークをノリコは見上げた。

「あ、ご免ね。えっと、学問所の友達皆で行く旅行なの。学習の一環で行くものなのよ」
「行きそびれた、というのは?」
「その前に、こっちに来ちゃったから。ふふ」
「・・・・・」
「やだなあ、そんな顔しないでイザーク。まるであなたの所為だって言ってるみたい」

その、正に自分の所為だと言わんばかりに眉尻を下げたイザークにノリコは笑み、両の腕をそっと夫の背に回した。

「こっちへ来てからは、イザークと色んな場所へ旅をしたわ。ほぼ世界の国を回れたのよ。あっちにいたら一生掛かっても叶わなかった事だわ、ね、そうでしょ?」
「ノリコ・・」
「今だって、こうして雪の季節にこの国を訪れる事が出来てる。ね、あたしにはずっと価値があるの」

何処か安堵を滲ませたような・・・―――そんな風に僅かに相好を崩し、だが、何も言わぬままイザークはノリコを抱き締めた。 すっぽりと収まった華奢な身。自身の腕にすっかり馴染んだこの存在が、これまでどれほど自分の救いとなってきたか・・・
何よりも心地良く、そして何よりも嬉しいその存在であった。

髪に頬を寄せたその下で、それにね――とノリコが微笑う。

「その旅行の時期には雪は望めないのよ、どの道ダメなの。だからイザークに連れてきて貰えて良かった」

僅かに瞠る。尚も可笑しそうにノリコは微笑った。微笑う所為で、微かに伝わる身体の揺らぎ。それすら、心地好い・・・



北方の国タルメンソン――隣国タザシーナとの境に近い街ニレイスドナに二人はいた。
季節は、年を跨ごうとする些か手前の寒い時期だった。
常ならば今頃は当に雪に埋もれている筈であった。が、今年はまだ些かの雪が降ったのみで、さほどの積雪ではない。

この国にはイザークとノリコだけではなく、バラゴやアゴルも来ていた。
いずれも今回の任務遂行の為の随行である。主たる目的はザーゴとタルメンソンとの間の同盟調印であり、その大使一行の護衛というのが任務であった。 既にタルメンソン皇室との調印は結ばれ、今はその帰路にある。そして、バラゴとアゴルは二人と同じ宿の別室にてそれぞれ身を休めていた。
大使一行にはアレフも追随している。尤も、アレフは今は別件にてまだ王都に在るが。

「悪いね、折角の新婚さんを駆り出しちゃって。でも良い夫婦旅になったでしょ? ま、寒過ぎるのがちょっと玉に瑕だけどね」

夫婦旅という言葉に、ハネムーンを思い浮かべたノリコだ。そして、飄々と語ったアレフもまた相変わらずである。
あの国に留まらず今も居を定めない旅の者であったなら、わざわざ新婚旅行と括るまでもないのだが。
・・・そんな意味合いの面を晒し、それでもイザークは依頼を承諾した。
イザークが承諾したなら、バラゴやアゴルにも異存などない訳で。寒い国ならではの特産の酒が楽しめると期して・・・というのは、ここだけの話。

イザークが妻のノリコを連れてきたのは、必然の結果だ。
彼等はまだ婚姻の誓いを交わして二月に満たない。 同盟国バラチナに在るとはいえグゼナを挟んだ遠き国の、しかも婚姻後それほどの間も空かぬ彼等を今回に任務に推したのは、何よりザーゴの篤き信頼に因る。 だが、篤き信頼など例え国と一緒に熨斗付でくれてやると言われても、要らんの一言で済ませられる価値でしかない。 だから、妻を連れてきた。
これまでの世直し旅にも彼女を連れている為、これについては不問とされた。アレフの根回しのお陰もあるが、 自国の資源に基づき中立自治に拘ったタルメンソン側が最後まで調印に難色を示していた所以もある。公務であるというのに微妙に解任時期の定められない今回の任務依頼、長いこと妻を残すのをやはりイザークが憚った。
ガーヤの許なら無条件で安堵を得られるのだろう。が、そういう理屈で括れない処にイザーク側の事情というものがある。
―――・・・が、今回に限るなら、都合は至って単純な図式であった。
イザークとノリコは既に別件でザーゴを訪れていた。これまでの日記と手紙、そして、先に完成し届けられた二人の婚儀の肖像画をノリコの家族に送り届ける為だ。
折悪くと謂わしめよう、樹海の帰り王都に差し掛かった二人は、待ち構えていたアレフにちゃっかり捕らえられた。
バラチナは花の町に打診の折バラゴから得た情報で、二人がザーゴを訪れている件を既にアレフが握っていた為だが、文字通りの包囲、並びに否応なくの連行には、些かの憤慨を顕にしたのは言うまでもなく・・・ しかも、バラゴとアゴルは既にザーゴ王都に来ていたのだから、イザークとノリコも開いた口が塞がらなかった、という次第だ―――



午後に宿を出る予定であったが、女将に留められた。空模様が怪しい、こんな空になると、毎年吹雪が来るんだよ――と、女将は眉根を寄せた。
王都中央を離れこの街に差し掛かった折には空の機嫌は良かったが、一晩の宿を取り、発とうとした翌日よりにわかに転変。この街で生まれ育ったという女将の見通しは当たり、 程なく空は雪の乱舞を見舞った。吹雪の中での移動は流石の男でも支障を来す。留まって正解だったと言えよう。
そして・・・――ノリコの見た雪とは、その吹雪の舞であった。
雪が降るとの報にノリコは嬉々とした。毎年の雪に泣かされている女将にとってはノリコの笑顔は苦笑を催すものでしかなかったが、元来客とはそんなものだ――と、それも苦笑と共に流した。
大体、吹雪とはそんな情緒的な代物ではない。

「しかし・・・余り風情のある降り方ではないな」

些か冷笑を含んだイザークの言葉にノリコは顔を上げた。夫は窓の外に視線を遣っている。

「それに足止めも食らっている。雪深くなるなら、この国を出るまでにもっと時を要するだろう」

ある程度は予想していたが――と、ノリコが見つめる先で、イザークは呟く。アゴルはジーナを連れていなくて正解だった、との言葉を添えて――

「うん・・・」

ジーナは今回同行していない。占者とはいえ、年端も行かぬ少女で、しかも雪に慣れぬジーナがこの時期に雪深い国を移動するのを父親のアゴルが憚った為だ。 そのジーナは、今回はガーヤの許にて大人しく父の帰りを待っている。
ノリコも些か残念に思ったが、詮なき事だ。樹海への件はともかく、この土地にまで同行出来るとは全く期待していなかったのだから。 先にバラチナへ帰されるとまでは思っていなかったが、それでも王都滞在を余儀なくされるかと些か覚悟もしていた訳で・・・
同行出来るだけで嬉しい、しかも行きたいと願っていた北方だ。断る理由など見つける方が難しいというものだった。

「でも・・・いつまでも吹雪じゃないよね・・・ね?」
「ああ、まあな」
「イザークは、初めてだっけ? この国」
「いや、三度目だ」
「え、三度・・・も?」

興味深く問うノリコの眼差しに、若干の笑みを湛えてイザークは肯いた――・・・そう、三度目だった。
実は、前回のそれにはノリコも伴っている。この国の別な土地であるが。そして、その事にノリコは気付いていない。 前回のその時には国の名は明かしてはおらず、無論その時には雪もなければ、北方であるにも関わらず些か特殊な気候風土の地であったからだ。 そして最初のそれは、一度目と謂わしめるには滞在期間そのものが長かった。
長い筈だ――と、思い馳せる。今は微笑って話せるようにもなった。何よりもノリコという安定を得たからであろう。

穏やかであってもその先を語らないイザークに、ノリコもそれ以上訊ねる事なく・・・
夫の胸に頬を寄せ、温もりの中にいられるという幸に今は浸った。



昼間の吹雪はそれでも宵の際までには小降りになり、夕食を終えた頃にはほぼ止んだ。
街の人間はそれぞれの軒先の雪を掻いている。宿の主人も同じであった。こうした作業は冬の間、雪解けの頃まで続く。

食堂の卓から窓の外を眺めていたノリコはそわそわと何やら落ち着かぬ様子で。
それは部屋に戻ってからも同じく―――
物言わぬ空を眺めていたノリコは、うん、と意を決したように小さな拳を握る。

「ね、ちょっと外に出てきていい?」
「え」
「ちょっとだけ、すぐに戻るから」
「ノリコ、待て」

夫の制止に耳を傾ける暇もない、とにかく居ても立ってもいられぬ様で身を翻し、滑るようにノリコは部屋の外に出た。



「ひゃあ、やっぱり寒ぅーい・・」

見上げれば、煌めく星々で満ちた空が拡がる。外気は何処までも澄み、街灯の仄かな灯火が優しく辺りを彩っていた。
・・・しかし、やはり寒さが堪える。
本能的に身を竦めたノリコは、背後からふわり包む暖かな感触に目を瞠り、振り返った。

「・・・相変わらず無茶をする」
「イザーク・・」

軽装で飛び出したノリコの為に、外套を持ってイザークは出てきていた。
赤のそれと、肩と頭をすっぽり覆うケープが身を心地好く包む。そしてイザークも、身に外套を羽織っていた。

「ご免・・・あのね、雪に触ってみたくて・・・雪だるまは無理でも、雪うさぎなら作れる間はあるかなと思って」

またも耳慣れぬ言葉。嬉々として語る妻の言葉に、苦笑を交えながらイザークは耳を傾けた。

「明日の朝でも出来るだろうに」
「うん、でも・・・」

言いながらも、その手は新雪を掬い、冷たぁーい――と発しながらも掌に少し大きめの塊を作ろうと試みる。さらさらの雪がなかなか固まらず、些か楕円の塊をやっと作り・・・

「可愛い」

と一言。

「ね、うさぎに見える?」

爛々と瞳を輝かせる妻に問われるも、そも"うさぎ"という音(おん)の生き物に馴染みがない。
ノリコの世界の小動物であるのだろうというのは察しがつくが、塊のそれに意を求められても苦笑する他ない。 何せそれには、鼻どころか、目も耳もないのだから。

「もう、イザークったら笑ってばかり。そんなに可笑しい?」
「その塊を生き物だと言われてもな」
「んー・・・耳と目がないから、ダメかぁ・・・」
「それはどんな風についている」
「え・・・んー、耳は長くて、ここからこう、そしてね、目は小さくて赤いのが、ここに・・・」

ノリコの説明に、イザークは若干記憶を辿った。

「長い耳、小さくて赤い瞳か・・・なるほど」
「それっぽい生き物、いる?」
「多分、と言っておこう。そんな丸い体型ではないが」

・・・確かに。兎とはいえ、雪で作ったそれも実物の兎をかなり丸くデフォルメしているものだ。 実物の兎をイザークが知っていたとしても、これには失笑するだろう。
微笑う夫の言葉に思い致し、ノリコも暫し黙る。その掌からは、体温で少し解け掛かったそれの雫がぽたりぽたりと落ちていた。

「この辺では棲息しないから実物を拝むのは難しいが、雪のそいつを完成させるのは可能かもしれん」
「え・・・」
「少し走るが、一緒に来るか?」
「!・・・うん」
「寒いぞ?」
「我慢するっ」

覗き込んで問う夫の悪戯な瞳に、既にノリコはワクワクしていた。そんな妻の様をふっ―と笑んで見つめ、 外套とケープの前をしっかりと留める。そして更に、

「え・・ひゃっ」

軽く身を下げた夫にふわりと抱えられ、ノリコは反射的に身を竦めた。

「行くぞ」

合意を求めるまでもなく駆けだしたイザークの走りは、程なく常人のそれを超える。
持っていた雪の塊は、風に煽られノリコの手から滑り落ちてしまった。

「あ・・っ」
「心配するな、すぐにまた作れる」

落としたそれに気を奪われ視線で追おうとしたノリコを風から護るように胸に押さえ込んだ。そして尚もその足を止めなかった。

何処を走っているのか、解らなかった。
だが、身に感じる空気の流れ、外套の狭間から僅かに垣間見られる景色の流れが、夫が凄い速さで駆けているのを示している。なのに、風が当たらないよう夫は自身の外套で更に 自分を包んでくれていた。
胸の温かみのお陰で寒さは全く気にならない。伝わる温もり、そして想いが嬉しくて、うっとりと目を閉じた・・・―――



どのくらいそうしていただろう。緩やかになり止まった気配にノリコは顔を上げた。外套のフードをはぐった先に見えたイザークは、穏やかに笑んで自分を見下ろしていた。

「すまん、寒かったな」
「ううん、イザークにくっついていたから、温かかったよ。風にも当たらないように、包んでくれて・・・
有難う、イザークの方が寒かったでしょ? ご免ね、」

自分が外套を使ってしまったから―――と、夫の頬に掌をそっと当てた。
風を受けた所為か、イザークの頬は幾分冷たい。だが、気遣う言葉にもイザークは穏やかに頭を振るだけで、頬に添うノリコの手をそっと包むように握り、それから彼女をその場に静かに下ろした。

吹雪の後の道無き道を暫く来たそこは、風に吹き曝された滑らかな雪面を拝ませる丘陵となっていた。そして、後方には今来た足跡が付いている。
走りに関しても能力が長けているとはいえ、こんな道のない、しかも降ったばかりの雪の地をよくぞ支障もなく来られるものだ――と、いつもながらに感嘆する。
周辺に視線を戻すと、その先には林となっているのか雪氷を纏う多くの樹々が見えた。

「ここ・・・」

ノリコの問いに応えるようにイザークがある場所を指す。問うようにその先を見つめたノリコは、淡い月光に照らされた樹の枝に僅かに見える葉を見つけた。

「あ・・・緑の葉?」
「それだけじゃない」
「ぇ・・・」

言われて、もっと注意深く見つめた。葉の陰に、これも僅かであるが何かの実が生っているようだ。
冬であるのに緑の葉を成せているのは、恐らく常緑樹であるからだろう。足下の雪をサクサク言わせながら近付き、よく見ると、生っている小さな実は赤い。

「生憎と人が食べるには向かないが、森の生き物にとってはこの時期の食料代わりになる。残っていて良かったな」

まるで南天の実を小さくしたような・・・葉も濃い翠緑で些か細い・・・

「目と耳の代わりになるか?」

優しく覗き込んでの問いに、ノリコは一層瞳を輝かせた。

「うんっ。凄い、凄いよイザークっ、雪うさぎのイメージそのものだよっ・・・嬉しい、有難う」

感動に些か涙ぐんだ妻を微笑ましく見つめ、イザークはやおら足元の雪を掬った。そして先ほどのノリコのように握って楕円を形作る。ノリコも真似て雪を握った。彼女の作ったそれは、イザークのものより若干小さい。 そして、夫が取ってくれた葉と実を、それぞれ耳と目の位置にそっと付けてみた。出来上がったそれは、大きめのと些か小振りの二体の雪うさぎ。まるで・・・

「イザークとあたしみたい・・・」

にこりと目を細めた妻に、イザークも穏やかに肯いた。

「あ、雪が・・・」

振り仰げば、空からまた白い物。静かに降りてくるそれは、正に優しい舞であった。
そして、微かな雪雲が月の光をおぼろに見せる。

「寒くはないか」
「うん、イザークと一緒だから。有難う、連れてきてくれて」

変わらぬ笑顔の愛しい存在を後ろから包み、頬を寄せた。ふんわりと薫る優しい香りが、心地好く鼻腔をくすぐる・・・―――

「イザークは、この場所を知っていたんだね」

問いに、ああ――と肯いた。少し冷たくなった、自分のよりも小さな細いその手をそっと・・・しかし温めるように握った。
この国もあの街も、そしてこの場所も・・・馴染みのある場所だった―――
かつて寂寥を感じたその地は、今は幸福である自身を確かめられる場となった。
かつて家が滅んだ事を知らされたあの街は、尊い存在と共に過ごせる場となった。
身を凍えさせる冷たい風も雪も、心を突き刺すかのように思えた月の冴え澄んだ光も、今は寧ろ、生きている己を実感させる。何よりも幸福に生きて良いのだという、自身を・・・

「いい事いっぱいあったよね、あたしには凄く嬉しい年になったよ」

有難う――という声に、目を瞠る。
色んな事があったが、こうして二人、共に生きるのを選んだ。そしてこうして二人、同じ時を紡げている。
礼を言いたいのは、自分の方だ。いつも思う、それが何より嬉しい事であるのを。

「家に帰る頃には年も明けてるね、新しい年もいっぱい、いい事があるね」
「ノリコ」
「だってイザークと一緒だから。あなたと一緒なのが、一番いい事で、一番嬉しい事だもの」

言葉を返さぬまま、イザークは再びノリコを抱き締めた。
今度は、もっと大切に、その存在を確かめるように。

「おまえと、共にいられて、良かった・・・」

そして、有難う――・・・と、イザークも呟いた。



帰ったら暖かい部屋が待っている。冷えた身を温めよう。
そして帰りは、二人だけでかの地を訪れよう。
この街ニレイスドナを出たら、山沿いの国境に添って、アクシローダ、ツーグ、アルデュナへと続く。
そして・・・―――
かの地、ディラディヴァンが迎えてくれるだろう。
こんな時期でも、透き通るような花が咲き、穏やかな生き物達が棲息し、稀なる鳳・・・デュナスヴェルーダ(金色緋鳥)の舞う・・・

「さあ、戻ろうか」
「うん」

ノリコにまたケープをしっかり覆わせ、大切に抱き上げる。

「あ・・歩けるよ」
「この辺は雪深い、それに、俺がこうしたいんだ」

ダメか?――と問う優しい瞳に頬を染め、ふるふると首を横に振る。そして胸に頬を寄せた。

「またイザークの分まで・・・ あたしばかりで、イザークが寒いよ・・・」

すぐ上から、大丈夫だ、と声がする。

「ノリコを抱いてるから、温かい」



温かい。心の中が温かい。
空より舞う雪も、穏やかで、温かい。
二人を優しく包む、幸いを呼ぶ白い雪。

ずっと、ずっと・・・――――

―――――
――



そして・・・―――
二人が戻った後、宿の戸口先には二体の雪うさぎが仲良く並ぶ。
空からは、静かに静かに、雪が舞う。

幸いという名の白い雪。そして、
幸いという名の、静かな夜・・・―――






(了)

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++ あとがき ++

お読みくださり有難うございます。
ひなた様より戴きました《雪うさぎ》の絵からイメージを温め書いてみました。
しかし、都合五日間の完全やっつけです。
推敲に充分な時間を割けなかったので所々変かもしれませんが、どうかどうか…
クリスマスだったなら聖夜というところでしょう。
年末なので、二人にとって良き年だったという事で纏めました。
時節モノには弱いんです…ホントはクリスマスに間に合えば良かったのですが、
良き年で締め括る事が出来て、これもまた宜し…という事で。
…うん、却って良かったかも(笑)

雪うさぎに使った葉と実は、ほぼ南天のイメージという事で。
作中に出てくる地名、街名、鳥の名。全て管理人の脳内イメージからです。
金色緋鳥…かの地の鳥、今回は横文字も考えてみました。如何でしょうか?
いずれも原作には在りませんので、悪しからずご了承願います。

夢霧 拝(09.12.30)
『あんずいろapricot x color様より素材をお借り致しました。




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