おひさま 「ラピィス、2階はダメだぞ。」 階段を四つんばえであがろうとしている娘をひょいと抱き上げて、イザークはそのおでこをちょんと突いた。 ちょっと目を離すと、すぐ2階にあがろうとする。 あがるのが目的なのではない。客室で寝ている母の元へ行きたいのだ。 「かあさまは、お風邪だから、いっちゃダメだ。」 「やんっ!かあたまっ行く!」 「ラピィス…、かあさまをゆっくり寝かしてあげよう、な?それに、お前にうつったら…。」 「う〜かあたま〜。」 尚も愚図る娘の背中を擦ってやりながら、イザークは軽くため息をついた。本当のことを言うと、2階に行きたいのは、イザークも同じなのだ。 ノリコが珍しく熱をだしたのは、2日前。ラピィスにうつらぬよう、その日からノリコは客間で養生している。 考えてみれば、熱をだしたのは花の街以来か。 2人で旅をしていた頃は、ガーヤに預けるまでは厄介を増やさぬよう、默面騒ぎの後は恋人として、イザークは何かと彼女の体調には気を使ってきた(某癖毛の大佐に言わせれば、「照れずに、早いうちから大切だったんだって認めなよ。」となるが)。 もちろん、結婚してからもそれは変わらない。 が、このところの寒暖の激しさで、やはり最近流行っている些か質の悪い風邪に薬湯も太刀打ちできなかったらしかった。 居間に戻ると、イザークは娘を長椅子に下ろした。 黒い瞳が潤んでいる。瞼に軽く口付けして、イザークは愛娘に微笑んだ。 「きっと、明日辺り、熱も完全に下がるから、な。」 そういうと、椅子の上に取り込んだ洗濯物を畳み始めた。 それを見ていたラピィスも、衣類に手を伸ばす。 「手伝ってくれるのか。ありがとうな。」 畳んでいるのか、しわしわにしているのか。しかし、イザークは娘が丸めた自分のバンダナを嬉しそうに受け取る。 「上手だな、ラピィス。」 「きゃう!じょーずっ。」 更に、嬉々として洗濯物を畳む(?)娘に、ほっとして、自身も作業を続けていたイザークの手が、暫くして止まった。 「ぶかぶかぁ。おび〜、ぐりゅぐりゅねぇ。」 ラピィスがノリコの部屋着から首を出していた。帯も巻き付けようと頑張っている。 …にゃかい こむんだ… ニコッとした娘の笑顔に、あの日の妻の幼い顔が重なる。 イザークは、ノリコの部屋着ごとラピィスを抱えあげた。 「かあたまのにお〜い。おひさまぁ。」 ラピィスが手の出ない袖に頬を寄せて言った。 「あぁ、そうだな。おひさまのきらきらした香りだな。」 父と子は、笑みを交わす。 「ちょっとだけ、かあさまの顔、見てくるか?」 「うんっ。」 「お部屋では、しーっだぞ。」 「はぁい。」 イザークは宝物を抱え、もう1つの宝物が寝る2階へとあがっていった。 ★★★ インフルエンザの熱も下がり、しかしながらいきなり万全整う筈もなく… 体調回復に調整中であった時に、カメカメ様よりこんな素敵なお見舞いを拝しました。 はぅぅ… なんて、なんて、なんて… うるるっと来ましたよ。心の中に、ほんわりじんわり… なんでしょうかね、本当、温かくなって、嬉しくて、元気、戻って参りました。 もう、この小さな可愛い天使に、私すっかり癒されてしまいましたよ。 イザークさんも、昔を思い出して、癒されたんだろうな。 ううん、こんな可愛い天使が傍にいたら、毎日が癒しだろう。 ノリちゃんがいて、小さな天使がいて、おひさまに照らされて…幸せなイザークさん。 うん、嬉しい。 そして、こんな素敵なお話を拝める私も、幸せです。 さて、もう一つの宝へのご案内です。 このお話には実は後日談があるのです。 お話を伺い、大変興味深いと申し上げましたところ、カメ様もお忙しいでしょうに、なんと木に登って書いてくださいました。 うん、私も嬉しいと木に登りたくなります(笑) 有難うございます。気前宜しく筆を執ってくださったカメ様…大好きです。 更に心温まる『後日談』は こちら から(TREASURE Topからも飛べます)。 イザークさんと一緒に、皆様も、どうぞ『じわわん』となってくださいまし… 夢霧 拝(09.10.31) シリウスの夢 カメカメ様のサイトです。ワクワクが一杯詰まったとても素敵なテーマパークへどうぞ。 ※ このページは、ブラウザを閉じてお戻りください |