◆ 君につなぐ想い 7 ◆


典子の今いる世界から見るなら、ここは次元を越えた異世界にあたる――――


バラチナ国。隣国にはザーゴ、グゼナ、ヤンスク、ギーコ、カンビーナ、アンジモと接している。

そのバラチナ国の中に花の町がある。気の良い人たちが暮らす、長閑な町だ。
山で採れる花々から造られる香水や化粧品が、この町の産業の中心となっている。

その郊外にある緑豊かなこの地。町までは馬があれば半時程で行ける距離だ。

更に郊外に進んで行けば、農業を営む家々も点在し、作物の豊かに実る畑が整えられている。
緑の深い森、そして清流も流れ、天然の広大な花畑が拡がる風光明媚な所だ。
この花畑や森では薬草も多く自生しており、イザークもよくそこへ摘みに訪れていた。

香りの良い美しい花々が野にも山にも群生しており、年間を通して気候も温暖で、
とても暮らしやすい地である。

少し行けば実が採れる野生の果樹なども多く、ノリコもよく摘みに来てはジャム作りや
おやつ作りに利用し、顔見知りの近所の子ども達にも、こうした手作りおやつを振舞っていた。

元より面倒見も良く、彼女の柔らかな笑顔が人を和ませるのか、ノリコは子ども達に
大変人気があり、夫イザークと共にこの町の大人達からも信頼を得ていた。

そしてこの地には、かつて共に旅をし、共に元凶を倒した時の仲間
――ガーヤ、バラゴ、アゴルとジーナハース親子――も共に、
同じこの町に落ち着き、それぞれそう遠くない所に居を構えている。





所用を終えて、ザーゴの首府から自宅に戻って来たイザークは、ノリコがいなくなったと
蒼褪めて話すガーヤの言葉に愕然とし、その場で氷ついたように動けなかった。



イザーク―――
その本名を、イザーク・キア・タージという。

年齢は二十三歳。


無駄な贅肉などは一切ない。鍛えられた逞しい、且つしなやかな体躯。
艶のある漆黒の髪が背中まで伸び、整った凛々しい眉の下の瞳は、
普段は黒だが、光の加減により時に蒼(青)色にも碧(緑)色にも見える。

鼻筋もすっと通った、秀麗なる容貌。

かつては渡り戦士として、盗賊や悪漢退治などで得た報酬で日々の糧を賄っていた。
が、その美しい顔立ちは、むしろ剣士としては似つかわしくないかもしれない・・・
盗賊退治を依頼されても、必ずと言って良い程腕試しをされた。

だが、その美貌と線の細さに似合わず、剣の腕前は誰にも劣らない。
おそらくこの世界では、彼の右に出る者はいないと言っても過言ではないだろう。
そして、剣術と共に体術にも秀でている。

この世界の人間の中には稀に、特殊な能力を持つ【能力者】と呼ばれる者達が
存在しているが、イザークの場合は、その中でも類を見ない卓越した能力を
数々持ち合わせている。

気配に聡く勘が鋭い。風、そして火を自在に操る。凄まじい威力の遠当て、並外れた体力、
ずば抜けた跳躍力、常人を凌ぐ俊足、巨大な岩石をも持ち上げる怪力、更には透視力も持つ。
妻のノリコとならば、遠耳(テレパシー)でのやり取りも可能だ。

薬学に精通しており、医術の心得も多少ある。ものを作り出すスピードも並外れて速い。
しかも何事も器用にこなし、身のこなしも鮮やか、且つ優雅で無駄が無い。

強靭な肉体を持ち、たとえ致命傷のような傷を負っても、数時間で治癒してしまう。

彼に弱点や欠点を見出せる者が、果たしているだろうか・・・

彼の出自について知る者はいない。だが、世を震撼させる【天上鬼】になる者として
生まれたが故に、凄まじいエネルギーを身の内に秘めている。しかし彼自身は悪鬼に
なるのを望まず、自ら光の側の世界に立ち、平和に貢献する為にその力を使って来た。
いまや【天上鬼】の力も、彼は完全に制御出来ている。強く気高い、光の力を持つ青年だ。


元凶を倒した後も、この光の力を使い、荒廃したこの世界を建て直す手伝いをする為、
ノリコや他の仲間と共に各地を旅してきた。


このノリコというのは、【天上鬼】を目覚めさせる役割を持つ【目覚め】として
異世界から飛ばされてきた少女だった。

当時イザークは十九歳、ノリコは十七歳。
最初はこの【目覚め】をイザークは抹殺するつもりでいた。
【目覚め】が現れる樹海に入ったのもその為だった。

だが、自分を化け物に変えてしまう【目覚め】と知りつつも、彼は彼女を
殺す事は出来なかった。彼女を森の化け物・花虫から助け、樹海から連れ出し、
それ以来、共に行動してきた。

最初は、自分の役割も何も知らなかったノリコだった。
しかし、彼女の笑顔はイザークの孤独を癒していき、そして旅する道すがら、
ノリコはイザークに次第に魅かれていくようになる。

後に、自分が【目覚め】、そしてイザークが【天上鬼】である事を知らされ、
彼を犠牲にしたくないという思いから、ノリコは一度は彼の元を離れようとする。
だがイザークもまた、彼女を唯一無二の存在と思うようになっていた。
お互いに想いを通じ合わせる事が出来てからは、この過酷な運命を変えるべく、
彼の苦しみ、その望みを理解し、必死で支え続けてきたのだった。


その後、各国を建て直す為の旅も一段落した後、長閑で肥沃なこの地を
落ち着き先に選び、イザークは、自分の最大の理解者であり、共に苦難を乗り越えて来た
このノリコと婚姻を結び、永世の契りを固く誓い合う。
永く辛かった闇の宿命と孤独に別れを告げ、自らの手で勝ち得た幸せだった。

彼らの婚姻に際しては、かつての仲間達皆が祝福してくれた。
そして、ささやかながらも二人の新居を構え、日々の暮らしを楽しんでいた。
この地に住むにあたり、かつて交流のあった花の町の町長やその娘夫婦、
ニーニャとカイザックも色々と懇意にしてくれ、今も何かと心を配ってくれている。

二ーニャとは、ノリコも互いの家をよく訪ね合っている。
料理やお菓子のレシピをやり取りしたり、他愛の無いおしゃべりなどもしているようだ。

この地に落ち着いてから、かれこれ半年余りになるだろうか・・・


彫刻のようなその美貌とその寡黙さに、最初は人を寄せ付けない雰囲気もあったが、
労を惜しまず働く真面目な姿勢、何より請け負う仕事は最後までキッチリ果たす
責任感の強さ、心根の優しさ、情の厚さ。そしてその多才さ・器用さ(もちろん
【天上鬼】であった事は内密であるが・・・)から、彼もまたこの地に自然と馴染み、
町や近隣の村の者達からの信頼を得るのに、そう時間を要しなかった。

そして更に、この町の年に一度の花祭りの際には、ノリコと共に協力を惜しまなかった。
特にイザークは、ニーニャの夫のカイザックと共に、祭りの祭神の役割を担うようになる。
長身で黒髪、更に背格好も面差しも似た二人の美丈夫を祭神に頂くこの地の花祭りは、
以前にも増してこの町の、そして遠く東大陸までその評判が轟く、バラチナの名物と
なってしまった。




そのイザークが、全く動けない。

否、正確には、僅かに彼の身体は震えていた。
顔色は死人の様に暗く翳っており、その拳を爪が食い込む程に固く握り締めている。


イザークの肩と足元には、持ち主の思念に反応して瞬時に空間を移動するという
特殊な能力を持つ動物――名をチモという――のオスとメスが一匹ずついる。
一匹は彼が元々連れていたが、もう一匹は、ノリコを心配する彼がシンクロして
早く帰宅出来るようにと、ザーゴにいる友人が気を利かせて貸し与えてくれたものだ。


普段チモで瞬間移動できる範囲は、五ヘンベル(約四十五メートル)が限界だが、
二匹のチモを使えば、《シンクロ》と言って、長距離を一挙に移動する事も可能だ。

しかし《一人シンクロ》は相当消耗する。命にも危険が及ぶので、通常はなされない。

だがイザークなら《一人シンクロ》をしても、さほど消耗しない。
それは彼の内なる力と、底知れない体力の賜物であろう。



テーブルの向かい側には、ガーヤが悲痛な面持ちでいた。

「昨日の夕方、あたしが訪ねて来た時には、もうノリコの姿は無かったんだ・・・」


ガーヤは、昨日訪ねて来た時の状況を説明した。

「・・・部屋の状態はあたしが発見した時のままさ。何も弄ってないよ。
 椅子が倒れてて、裁縫道具が散乱していたのさ。
 出かけるにしては、このままにして行くはずがないし、第一いつまで経っても
 戻って来ないのはおかしい。扉にも錠が掛かっていないし、
 物盗りにあったにしては、部屋のその他の物は一切荒らされていないしね。
 これは尋常じゃないよ、イザーク・・・」

ようやく身体を動かし、イザークは散乱している裁縫道具に近づくと、その場に屈み
それを手に取った。落ち着いた感じの濃碧色。そして厚手で丈夫なその生地。
型と布の量から、それが自分の為に作られている物である事は、容易に察する事が出来た。

「ノリコから口止めされてたんだけどさ・・・それ・・・・」

「俺の上着か・・・・・」

「あんたの喜ぶ顔が見たいからって、ノリコは内緒にしてたんだよ・・・
 あたしの店で生地を選ぶ時にもさ、そりゃ嬉しそうにしてたよ。
 あの子もお裁縫・・・随分と上手になったしねぇ・・・・
 それにしてもいったい何があって・・・何処に行ってしまったんだか・・・」



・・・・・・・

その場に微かに漂うノリコの残り香は感じた。

僅かだが、若干テーブルの位置が移動している。
それが解ったのは、床にあるテーブルの足の跡が若干ズレていたからだ。

このテーブルは頑丈な木で作ったものだ。
普通よりかなり重いから、ノリコ一人で動かすのは無理だ。

誰か、何かに動かされたのだろうか。
しかし、何者かが侵入したような形跡はない。


これは何を意味するのだろうか――――

まさか・・・

空間が動いた?・・・まさか・・・


・・・・・・俺の脳裏に様々な想いが駆け巡った。


ノリコに何度も心の中で呼びかける。遠耳だ。・・・だが通じない。
全く気配が感じ取れない。
こんな事は、エンナマルナでノリコがラチェフに拉致されて以来だ。

眉根が寄る・・・・

たとえ遠くとも、この世界にいてくれるならば、遠耳で通信が可能だというのに・・・

「ノリコの気配は感じられないのかい?イザーク・・・」

「・・ああ。・・・あいつの気配は、何処にいても俺には解かる。たとえ遠くても
 弱くても、感じ取る事が出来る。だが、今はそれが全く感じられない。
 そして遠耳も使えない。あいつから何か言って来ても良いはずなのに・・・
 俺からの呼び掛けにも、全く反応が無い・・・」


そしてチモでノリコの傍に飛ぼうとしても、チモが全く反応しない・・・


ザーゴでアレフ達と会っている時に・・・僅かだがあいつの声が聞こえた・・・
俺からの呼びかけに応答が無いのが気になって、早めに戻って来たのだが・・・

誰かに攫われるような恨みを買った覚えは無い。
悪心を持った輩がうろついたような気配も、そういう噂も無い。

遠耳をも気配をも遮断するような結界が張られるとは・・・考えにくい。

いったい・・・何処へ消えたんだ・・・――――――



イザークは俯いたままゆっくりと立ち上がる。
冷たい、厭な汗が流れた。


暫く彼は黙っていたが、やっと口を開く。

そして、一番認めたくなかった言葉を放った・・・・


「ノリコは・・・あいつは・・・もうこの世界には・・・いないのかもしれない・・・・」

ガーヤは顔面蒼白になる。

「イザーク・・まさか!」


恐れていた事が・・・とうとう現実になったのか・・・――――!

くっ!!









翌早朝、イザークは自宅の二階で、旅支度を整えていた。

黒の襟高のシャツ、同じく黒の細身のズボン。
襟元の広く開いた蒼灰色の上衣を着込み、暗碧色の帯を腰に巻きつけ、ベルトを締める。
腰には剣を携え、頭には帯と同色のバンダナをキュッと締めた。

秀麗な容貌と相まって、その姿はとても美しく、壮観だ。



荷物を手に階下に下りて行くと、早朝にも関らずガーヤが来ていた。

「ガーヤ・・・」

「おはよう、イザーク・・・その格好は・・・・」

「ああ・・・これから樹海に発つ・・」

「樹海に?・・・じゃあ、ノリコの世界に飛ぶ気なのかぃ?
 でもそんな事、本当に出来るのかぃ?」


イザークは天井を仰いで、深く息を吐き、目を閉じる。


これまでも、ノリコの書いた日記を樹海から向こうの世界に送っては来た。
勿論ノリコを向こうに送り届ける事だって、力を使えば可能なのはもう解かっている。
だが、彼女をこちらから呼び寄せる事は出来ない。
そして、自分自身を移動させる事が出来るかどうかだが、これについてはまだ解からない。

同世界間の《移動》とは、当然勝手が違う。


「イザーク、ノリコを呼び寄せる事は出来ないって言ってたよね、確か・・・」
「そうだ。・・・だから俺が行く。もっとも、こっちに戻って来れるかどうかは解からん。
 もしかしたら行きっ放しになるかもしれん。だから、これは一か八かの賭けになる・・・」

ガーヤの顔色が、またしても蒼くなる。

「・・・もしも、戻って来れないとなったら・・・あんた・・・向こうで?・・・」

「・・・そうだな。こっちとは違うから、戸惑う事も多いだろう。だが、向こうにはノリコがいる・・・」




イザークはその後しばらく黙っていたが、やがておもむろに口を開き・・・呟いた。


「俺がノリコと初めて会ったのは、樹海の金の寝床だ。これが何を意味するか、解かるか?・・・ガーヤ」

怪訝な顔でガーヤが見る。

「俺は、最初あいつを抹殺するつもりで、樹海に入った・・・」

「イザーク・・・・あんた!」

「何でガーヤの所にノリコを預けに行ったのか、不思議に思っていただろう?・・・」

イザークは苦笑しつつ、ガーヤを見る。



俺は、【目覚め】を殺して・・・自分が【天上鬼】になるという運命から逃れたかった。
自分が破壊の怪物と化すなどと、どうしても耐えられなかった。

確実に【目覚め】を仕留める為なら、刺し違えても構わんと思っていた。
それが化け物の姿をしているのか、俺よりも優る能力を持つ奴なのか、
その時まで全く未知なるものだったから・・・

だが・・・・・

「・・・樹海の金の寝床に現れたのは・・・自分の役目も、
 何故この世界に飛ばされたのかも知らない・・・・普通の人間の女の子だった・・・
 彼女の姿を見た時、俺は一瞬、自分が何をしにそこに行ったのか・・・
 目的を見失ってしまった。・・・は!・・・滑稽じゃないか、まったく・・・」

イザークは、額に手を当てて自嘲した。


突然現れた花虫に怯えて立ち竦んでいたノリコを見かねて、俺は助けてしまった。
【目覚め】を始末する筈だったのに。
放っておいても花虫にでも食われれば、それで目的は果たせた筈だったのに・・・・


「だが、殺せなかった。たった一人で知らない世界に迷い込んで、いきなり【目覚め】などと
 運命づけられ、それを知らずに怯えて泣いている弱々しい存在のあいつを、放ってはおけなかった。

 その後、あいつは健気に俺について来た。行く宛ても、言葉も生活習慣も解からず、
 不安だった筈なのに、ただ俺を信頼して・・・ 俺に関ったが為に、あいつの人生を狂わせて
 しまった。元の世界にいれば、あいつも辛い思いをせずに済んだだろうに・・・」

「でも、それは・・・ノリコだって、あんたの事を慕っていたんだから・・・
 セレナグゼナでノリコがあんたの事が好きなんだと解った時は、そりゃあたしは、嬉しかったもんだよ。」


それを聞き、自嘲が漏れる。


・・・そうだ・・・・。あいつはこんな俺を慕ってくれた。
【目覚め】の存在が怖くて、あいつを遠ざけたくて仕方なかった俺なのに。
ガーヤに託し、逃げるように去った俺なのに、あいつは俺を恨むでもなく、
俺との再会を喜び、その後もずっと笑顔を向けてくれた。

力を使い過ぎてしまい、【天上鬼】の身体へと変化するのをどうする事も出来ず
その醜い姿をあいつの目の前で晒してしまった時も・・・・ それでも、あいつは俺を好きだと言ってくれた。

どんな姿でもいい・・・何者でもいい・・・と・・・

俺が自分自身の迷いの為に、どっちつかずの冷たい態度をとっていた時でさえ、
あいつは、変わらずに想い続けてくれた。

・・・・俺は・・・あいつを傷つけてばかりだったのに・・・



その瞳が光を受け、黒から碧色へと揺らぐ。
拳をぐっと握り締める。


「・・・あいつの存在に俺自身が癒されていたんだと・・・別れてみて初めて思い知った。
 不安や恐怖を拭い切れずにいながら、同時に、おれに向けてくれるその笑顔に、
 光に魅かれていったんだ・・・」


怪我がすぐに治る俺の身体を目の当たりにした時、あいつだけがその回復を喜び、笑顔になった。
そしてその後に泣いて、安心したのか・・・俺の腕にもたれて眠ってしまった。

他の人間は皆気味悪がって、そんな俺から遠ざかったのに・・・
俺の母親でさえ・・・俺を化け物と疎んだのに・・・あいつだけが・・・


そしてあの時・・・・

ノリコが攫われ、黙面の生贄になると聞いた時に、俺の中で何かが音を立てて切れた。

俺は、俺自身に腹が立った。

そして、自分の宿命を呪った。
俺とノリコにそんな宿命を負わせた、この世を恨みたかった。

そして、ノリコを狙った奴等に・・・猛烈に腹が立った。

・・・俺の中にどす黒いものが湧き上がり、俺は【天上鬼】の力を解放した。

ノリコが生きてくれてさえいれば、俺は彼女の幸せを願っていけた。
だが、そのノリコの命が尽きようとしているなどと・・・考えたくもなかった。

ノリコを失うくらいなら、自分も、この世の中も
どうなっても構わないとさえ思えた。

自分の中の問いに結論を出す事が出来なくて、
それに気が付くのが遅かった所為で、俺はあいつを傷つけてばかりだった。

傷つけたままであいつを失うなんて・・・
そんな事させて堪るか・・・!


俺の大事なものが、皆、俺から去っていってしまう――――

俺の大事なものを、皆が、俺から奪っていってしまう――――


冗談じゃない!


周りにどう思われようと、もう構わなかった。

怒りに任せ、【天上鬼】の姿を晒してでも、俺はあいつを救いたかった。
あいつを死なせる訳にはいかなかった・・・――――



「・・・俺の中であいつの存在が・・・かけがえのないものに・・・なっていったんだ・・・」




ガーヤは思い出していた。ワーザロッテの親衛隊にノリコが攫われたあの日のことを。
凄まじい力を爆発させ、異形の姿を皆の前で晒してまで、ノリコを救出しに行ったイザークの事を。

あんなにまで自分の感情を爆発させたイザークの姿は、それまで見た事が無かったのだ。





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台詞ですが、ややこしくて何ですが、舞台が変わると主体が変わります。
舞台が異世界での台詞は「」が異世界語、反対に『』が日本語がになります。
いや、異世界での日本語というのは殆ど出て来ないですが…
で、回想シーンの台詞は、どちらが舞台の場合でも、やっぱり『』になります。
ややこしくて申し訳無いですが、ニュアンス汲んでくださいませ。

で、文中、あぁもう厭になるくらい、説明入ってますね…
この辺、ネタバレいっぱいです。原作読まれてなくて、これから読もうという方には申し訳無いです。
原作を読まれている方…も、知ってる事をつらつらと…で、やっぱり申し訳無いです。
えっ?…イザークはこんなに饒舌じゃないって?…そうなんですけどね…
おっしゃるべき時にはちゃんとおっしゃってますね、この方は…。
殿方というのは、ここぞって時には、ちゃんと言うもんなのです。
という事で…(・_|襖|そぉ〜 夢霧 拝(06.03.13)
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